平成が終わって令和になっても変わらず、貧困の話をよく目にします。手取り15万円は自己責任だし、給料が上がらないのも全てお前が悪いという話が最近では有名でしたね。
日本では「自己責任論」が流行しているように感じますが、なぜそういう言葉をテレビやインターネットでたびたび目にするようになったかを考えてみると、SNS等が発達したことで社会的に弱いとされる人の声が世間に届くようになったからだと分かります。
社会的弱者と言えば高齢者や障害者などのことを指しますが、貧乏生活している人や被害にあいやすい女性も弱者ですよね。
そういう弱者(被害者)を弾圧するために使われているのが『自己責任』です。
なんでも自己責任で片付ける人、身近にいませんか?自己責任という言葉の真意はともかく、昨今のその言葉の使い方が私は嫌いです。その理由について書きます。
自己責任が嫌いな理由
自己責任論の意味について調べると以下のように書いてあります。
自分の行動の結果として危機に陥ったのなら、自分で責任を負うべきであり、他人に助けを求めるべきではない、といった論理を基調とする考え方。危険であることが事前に予測できたにもかかわらず、危険を顧みずに敢行したのだから自業自得だとする考え方。(引用:weblio)
日本は割と自由だからこそ、その結果は自己責任である・・・って考え方になるんだろうと思いますが、個人の力ではどうしようもないことも多いですよね。
- イライラして壁を殴ったら手の骨が折れた!→自分のせい
- 休憩しようと壁に手をついたら崩れて大怪我した!→壁が劣化していたせい
超単純な話でいえば、こんな感じです。
なんでもかんでも自己責任だと、②のパターンでも「そんなとこで手をつく方が悪い」「脆くなってることすら気付けないバカの自己責任」ってことになっちゃいます。
しかも自己責任って言葉は謙遜するときに使うのではなく、他人へ責任を負わせるときに使うことが多い。だから自己責任という言葉のイメージは悪くなるし、嫌いになる人が増えるんだと思います。
弱者を切り捨てるための言葉である
自己責任って、弱い人を追い詰めるのにとっても便利です。基本的に「自己責任」と言われるのは、以下のような弱い人に向けて対してです。
- 低収入の貧困で辛い・・・
A.それはお前の努力が足りないから!自己責任。 - ブラック企業に潰された・・・
A.そんなとこでしか働けないお前が悪い!自己責任。 - 増税でお店を畳まざるを得なくなった・・・
A.経営努力が足りないし、先の見通しが出来てない!自己責任。 - 詐欺師に騙された・・・
A.判断力が低いし、常識がなさすぎる!自己責任。 - 性被害に遭った・・・
A.肌を露出する服で男を誘ったんだろ?自己責任。 - 水害で家が流された・・・
A.そんなとこに住む方が悪い!自己責任。 - 避難所から追い出された・・・
A.汚いし臭すぎるから仕方ないだろ?自己責任。
自己責任で片付けてしまう人って、あまりにも思考停止すぎてヤバいと思います。
日本の価値観とズレている?
自己責任論は他国より日本の方が圧倒的に強いみたいですが、巷で言われている『自己責任』って、ある意味では日本の価値観と逆の方向に進んでいると思います。
日本人的な考え方って、困っている人がいたら手を差し伸べるとか、何か成功したらみんなのおかげと考えたり、謙虚であることが良いとされていましたよね。
剣道や相撲、柔道などの伝統的な武道って勝ってもガッツポーズとかしないじゃないですか。かっこ悪いし、そんなの情けないって。
スポーツで優勝した人も「勝ったのは、俺がすごいからだ」という考えよりも、
- 「一緒に研鑽した仲間がいたから」
- 「最高のコーチがいたから」
- 「支えてくれる家族がいたから」
といった意識がどこかにあると思います。
まぁ、勉強でもなんでも本人の努力が一番大切なのは事実ですが、俺だけが凄い!弱いやつはクズっていう価値観ではないんです。社会や周囲の環境が与える影響はとても大きいから。
それなのに、弱者の話になった途端に自己責任でズバッと捨てちゃうんですよ。
他の問題点を無視して、どれも個人のせいでお前が悪いで終わり。
本人が「いえ、自分が弱いせいですから」と責任を感じるのは正しいけど、周りの人間が「そうだ!全部お前の努力が足りないせいだ」というのは違うんじゃないでしょうか。
それに貧困の件をとっても、手取り10万円や14万円の人間が努力して転職に成功したところで、その抜けた穴には別の人間が入るだけで何一つ解決しない。これって自己責任だけで済んでいないってことですよね。
自己責任と手取り14万円の関係
12年間も正社員で働いて手取り14万なのは本人が悪い『自己責任』なのか、それとも日本が終わってるのか・・・と一時期ネットで盛り上がっていた件について。
どちらが正しいかというのは、今の自分の立場によって変わってくると思います。努力して成功した人は「お前が悪い」だし、努力してもダメだった人は社会を恨み始めることもある。とはいえ、現実的に考えて悪い現状を変えようと思うなら、自己責任と考えた方がいいのかもしれない。
日本ガーと言い続けても、何も環境は変わらないし、意味がないから。
だから「手取り少ない!日本終わってる」って嘆く人に対し、問題解決に向けてアドバイスするのだとすれば「お前が終わってんだよ」っていうホリエモン的意見はある意味正しいよね。
しかし、そういうつもりで自己責任と呼んでる人は少なく感じるし、なんでも自己責任で片付ける風潮が進んだ先は一体どうなっちゃうんだろうと不安になります。
自己責任と改善は別問題
以上が自己責任論が嫌いだと感じる理由です。
自己責任というのが全て間違いってわけではなく、インターネットやテレビで使われる『自己責任』という言葉が嫌いということです。自業自得とはちょっと違うんですよね。
実際問題として、自分でなんとかしなければいけないことの方が多いですし。かといってそれを他人が「自己責任だ」と個人に押し付けてしまえば、他に何が問題だったかを認識することもなく、改善する必要もなくなってしまう。
自己責任だと言われても、弱者になることが初めから分かっていて、望んで弱者になったわけじゃないんだから。危機意識が低いとはいえ、犯罪をされたくて夜道を歩いているわけじゃないんだから。
それは違うよねってことでした。
さいごに近年は不況らしいですが、競争社会と自己責任社会が進んだせいか、弱い人からより搾取する方向に進んでいる気がします。
- 低所得者の負担が大きい消費税増税
- インボイス制度の導入
- 生活保護費の減額
- 公務員の給料アップ
- 法人税の減額
- 銀行の口座維持手数料の徴収予定(残高が少ない人)
なんでこういうことをするかって、強い人からお金を取ろうとしてもいろいろな対策がとられるし、海外へ逃げられても困るからですよね。弱い人をさらにいじめる方が簡単だし・・・。
日本の自己責任ってこわいね。